空飛ぶくじら

世界の美しさを封印

美しく調和のある世界②


好きな作家を北から南へ鴨川に沿って順に並べていいと言われたら、川の分かれ目である最北の鴨川デルタに君臨するのはモリミー先生であると断言する。森見登美彦氏。古風でユーモア溢れる文体と魅力的な登場人物でわたしを無闇に魅了し、京都の底なし沼に「こっちの水は甘いヨ」といたずらに蛍を誘うように引き込んだのは紛れもなく先生の著書である。

夜は短し歩けよ乙女』の中で「美しく調和のある人生」という言葉が出てくる。それがこの記事のタイトルでもあり、わたしの生活のモットーでもある。
そんな、まあはっきり結末を言ってしまえば唾棄すべきラブロマンスであるのには変わりないのだが、わたしはこの作品が一番気に入っている。いや、一番というには早とちりかしら。先生の著書はどれも面白いので一番は決められない。
そのラブロマンスの中の最後に登場するのが、京大北門前の喫茶、進々堂だ。
はじめはちょっとした聖地巡礼のつもりで訪れたのだけど、それが読書に最適な空間で、わたしは忽ちその由緒ある喫茶店の虜になったのだった。

進々堂は重厚感のある内装と、室内に充満する珈琲の香り、囁くような話し声と今の時期はひたすらストーブの音のみで、とても落ち着ける雰囲気になっている。

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名物のカレーパンセット。美味しい。
ふらりと寄ったときのカフェオレも美味。
一人行動が多く静かな空間を好むわたしにとっては絶好の場所である。この進々堂のために出町柳周辺に引っ越そうか考えたくらいだ。今は京都人の家に嫁げないか画策中である。誰かもらってください。


お腹を膨らましたあと、バスに乗って京都造形芸術大学前で降りた。そこから乗車料金が上がるので徒歩。ひたすらゆるやかな坂を上る。ゆるやかといえど体力は削がれていく。

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そして到着したのは詩仙堂。竹林から差し込む木漏れ日が風流である。嵐山の竹林とはまた別な美しさがある。あちらは多種雑多な観光客が多い分、日中は何かと俗っぽく感じてしまう。夜は怖そう。

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畳の上に毛氈が敷かれているだけでそこが座る場所と一目瞭然である。ただ布切れ一枚敷いてあるだけの空間がなぜか趣深くなる。縁側でぼんやりと陽に当たりながら庭を眺めるのはそれだけで心が癒える気がするのだ。別に傷ついてはいないけど。


詩仙堂を出るとまた少し坂を登り、隣の八大神社を参拝した。何でも、一乗寺下り松の決闘が行われた場所で、岩のように丸くなった下り松が恭しく祀られていた。それより御神木の樅と杉の大きさに本当にひっくり返りそうになった。見上げすぎた。夏の暑い日にあの御神木の下に涼みに行きたいなあ、と思った。

八大神社を出て右に向かう。ひたすらのぼる。
のぼってのぼって、やっと狸谷山不動院の幟が見えてくる。
車祓いの場所を通りすぎて、健康階段と呼ばれる250段ある階段をまたひたすらのぼる。このまま昇天しそうだ。
ところどころいる狸の置物、たまに狐や変な置物が置かれていたりしてじつはほとんどは狸が化けてるんじゃないかという気になってきた。こうなるともう何もかもが狸に化かされているのでは、本当はこの階段も全て狸の仕業でちゃんと数えたら500段ほどあって参拝客の脚を粉砕する気なのではないかと最後は己の精神との闘いになる、というところまではいかなかったが眺めは最高だった。

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木々に埋もれているが遠くにうっすら見えるのは京都市街である。完全に下界だ。心なしか空気も澄んでいて、今の時期は寒いが夏の暑い日とかに涼みに行きたいな、と思った。夏は涼むのに忙しそうだ。

下界におりて圓光寺に向かう。

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白梅が空に映えて綺麗だった。圓光寺もわりとぼんやりできるお寺で、時間の流れが比較的ゆるやか。漢文の学校だった(?)らしく般若心経の活字版などが飾ってあった。

最後に日が暮れるぎりぎりに訪れたのが大豊神社。どうしても狛ねずみが見たかった。
フルーツバスケットという漫画があるのだが(これの面白さも格別だ)、ストーリーに十二支が大きく関わっており主人公の草摩由希の役割が子、つまりねずみなのだ。これとかどう見ても由希。

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お賽銭や参拝料などで財布の紐がゆるみ、もともとあまりない金銭がさらに余裕がなくなってきたので夕飯は安くてそれなりに美味しくお腹いっぱいになるレストランまどいに行きました。欲張りなCセットが好き。


ということで今回は何だか多く書きすぎた。
次回は3日目について紹介する。