空飛ぶくじら

世界の美しさを封印

台風の子孫

 

昔から、雲の流れが速いのをみて、上流域とわたしが立っている地上との差を感じるのが好きだった。ちょっとしたタイムラプス動画を見ているようで、変に心がワクワクした。台風の前兆、あの嵐の前の静けさが好きだ。

 

毎日毎日せわしなく生きる日々の中で、ふいに立ち止まって空を仰ぐ。深呼吸する。目を瞑る。このままだと自分が自分ではなくなるのではないか、不当な扱いの1つ1つに、都合のいい風潮の1つ1つに染まり続けてついには自分の意識も潰えるのではないか、そんな思いに駆られて焦燥感を覚えるときがある。夢はあれど未来がない。そんな思いを抱いて生きているわたしと同年代の人はきっと多数なんじゃないだろうか。

 

大切な人を守るためにわたしは自分を犠牲にしたくない。なぜならわたしの大切な人の大切な人はわたしだから。

 お互いを大切にしながら生きていく。知らない人に優しくなれなくても、大切な人を大切にしていければきっと社会全体でまあるくなれる。もう少しだけ他人に寛容になれる。

自分を許して他の人も許してあげたい。リスクに寛容になればこの世界はまだ生きやすくなれる。

 

台風は多くのものを巻き上げていった。いま一度立ち止まる時なんだろうか。安定を好むわたしたちの地盤が余りにも不安定で脆弱なものであることを認識する時なんだろうか。